ヒトのDNA複製開始点は1万個以上

補助的なヌクレオチドが結合

細胞分裂の際、DNAは自分と同じ構造を持つDNAの複製を行い、複製されたDNAは2つの娘細胞に分配されます。この完全コピーにより、生物の体はどの細胞も同じDNAを持つことができるのです。

DNAの複製は、複製開始点と呼ばれる場所で、螺旋が巻き戻され、二本鎖が分離することから始まります。2本のDNAは塩基の水素結合によって繋がっていますが、複製開始点から結合が解かれ始め、2本の鎖がバラバラになります。ヒトでは1万個以上の複製開始点があるといわれています。

1本になったDNA(親鎖)では、塩基A、T、G、Gがむき出しになっています。そこで、新しいヌクレオチド(糖・リン酸・塩基が結合したもの)が結合します。この新しいヌクレオチド同士も繋がって、新しい鎖(娘鎖)がつくられていくのです。

親鎖の塩基と娘鎖の塩基は、塩基結合のルール通り、A-T、G-Cの組み合わせが結びつきます。このため、娘鎖は、親鎖と分かれた片割れのDNAと、まったく同じ構造となります。

もともと二本鎖だったDNAが分離するので、親鎖は2本。それぞれの親鎖が娘鎖をつくり日本鎖のDNAが復元されます。これで大元のDNAと同じDNAが二つ出来上がります。

ただし、娘鎖が複製される方法は、親鎖ごとに異なります。DNAの向きが問題となるためです。DNAには方向があり、二本鎖は、互いに逆向きに結合しています。そして新しいDNAは、3'末端でしか合成されません。

つまりDNA合成は5'→3'方向に進行します。親鎖のうち1本の方向は、複製開始点から3'→5'の方向です。補助的な娘鎖は親鎖とは逆向きの5'→3'方向に順調に伸びていきます。

ところがもう一方の親鎖は5'→3'方向に伸びています。補助的DNAをは3'→5'に合成することはできません。この問題は娘DNAをは5'→3'に細切れに合成することで解決されます。

複製開始点から少し先に進んだ地点で、5'→3'のDNA断片がつくられます。断片はいくつもつくられて、並んだところで、糊の役割をするDNAリカーゼという酵素が、1本のDNAに繋ぎ合わせます。こうして、2本のDNAが無事に複製を完了します。